(きーすとーん70号より抜粋)

第12回「札幌百科」報告
 8ミリフィルムとスケッチで札幌の昭和史を回顧

 3月8日(日)、第12回『札幌百科』が札幌市資料館において催され、70人が参加。 街並み画家の浦田 久さんに 昭和30年代撮影の8ミリフィルムや 往時を描いたスケッチをご披露いただきながらお話をうかがい、札幌の昭和史を顧みました。


「札幌百科」会場風景
▼ 懐かしい画面とお話から、浦田さんの対象に寄せる温かい眼差しと思いが伝わってきました。 当時 札幌の人口は40〜50万人だったそうで、貧しくも精一杯明るく生きていた市民の姿が、懐かしい風景と共にあたかも紙芝居か幻燈を思わせる小さな画面にいきいきと再現され、思い出の世界に引き込まれました。 お話にあった路上映画会、私も観ました。 戦後、あちこちの砂利道にスクリーンが立ち、蚊に刺されながら、大人も子供も座って見入りました。 帰りの夜道にともる家々の電燈や丸井デパートの回転航空灯台に、戦争が終わった安堵感を子供心に感じたものでした。
 塾もいじめも無く、木造住宅の空き地で上級生もチビも一緒になって相撲に興じる光景、職場の新年会での天下御免の一升瓶、笑い顔がこぼれています。 切り捨てに懸命のあまり、世の中便利で小綺麗なお金持ちになりましたが、日本人の持っていた理屈を超えた無形の何か大きなものを失ったような気がします。 それは、消えた建物、街角にも言えるかもしれません。
 当時は8ミリフィルムをアメリカから取り寄せてハワイで現像されたとのこと、今昔の感がいたします。 帰宅して、浦田さんの思い出満載の画集に 今は無き光景を偲びました。 貴重な体験をさせていただいた『札幌百科』関係者にお礼申しあげます。[S氏]

▼ 浦田さんの映画トークは「北の映像ミュージアム」で何度か拝聴しておりましたが、お話の中に登場する“映画好きのお母様”の姿を今回の8ミリ映写で見られて、このようなモダンな方だったのかと、ニンマリしてしまいました。 私は参加者の中では最年少に近い(?)と思われますので 映像の中の実物は知らない世代ですが、中央区のど真ん中というのに建物が低く、なにより人々の普通の暮らしが感じられる動画を とても楽しく見ることができました。 古い映像には その時代が映っているので、もっとたくさん見られる機会があれば嬉しいです。 そして、そのような資料の保存がさらに活発になれば、言うことなしですね。[O氏]

浦田久さんの近作から「戦後の時計台界隈」
▼ 久々の8ミリ放映タイムに接して、札幌の今昔に思いを馳せました。 独特の映写ムードで見る昔の札幌、いい企画だと思います。 私も昭和40年代から8ミリ(カラーの世界)を楽しんでいますが、ビデオテープからDVDへの急激な変革は ときに戸惑うことも…。 8ミリの あの 雨が走っているテープには哀愁があります。 あったかさもあります。 私も今度、以前撮影したテープを取り出して、家庭内ミニシアター(?)で楽しもうと思います。[H氏]

▼ 浦田さんの絵に魅せられて参加しました。 70歳を過ぎてから かつての札幌の街の絵を残そうと描き始めて、今は86歳。 お元気な様子は 最近作の画筆にも表れています。 古い消防車を描いた力強い筆づかいを拝見すると、なんとも濃淡の使い方が上手で、とくに濃い部分の伸びやかなこと、今もその辺りを現役で走っていそうです。 街ゆく人を積極的に描かれていますが、実際に歩いているような動きを感じますし、建物の大きさを知覚させると同時に時代を知らせる重要な素材となっています。 ご自分の作品や秘蔵の8ミリフィルムを語る言葉も、北区長を最後に 役所を辞されて絵の道を選んだ意志に似て、はっきりと明瞭で分かりやすい。
 8ミリフィルムを拝見し、映し出された人の動きが、浦田さんの描く人に重なって見えた気がしたのは錯覚かもしれませんが、人見る優しい眼差しを感じた次第です。[I氏]

 ※掲載の感想文は当日のアンケートから一部抜粋させていただきました。
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