(きーすとーん68号より抜粋)
「描く会」は平成14年から始まりました。 毎年気候が良くなると始まり、秋が深まる間の数ヶ月、毎月一回行ってきた会が、今年になって50回に達したそうです。 その間、我々が描いてきた建物は
それぞれが永い年月を過ごすなかで、美しく古びた姿を見せてくれていました。
しかし、取り上げた建物のなかには、その後無くなってしまったものもあります。 札幌軟石やレンガ造の建物も比較的多かったのですが、今、この組積造の建物が
札幌の街で壊されてきました。 王子サーモン館も無くなりました。 石の蔵ぎゃらりぃ
も 間もなく無くなるそうですね。 そして、その後には
金属とガラスを身にまとった モダニズム建築がそそりたつのです。
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伏古 水島家倉庫 |
道庁赤レンガの少しあとの1906(明治39)年に建てられたレンガ造の五番舘は、大分以前に近代的な店舗に建て替えられましたが、その後に建った建物も
それこそあっという間に無くなりました。 このように常に成長し続けることを求める、資本主義経済に支配されるようになった近代建築は、考えていたよりはるかに時間に対して脆弱だということも分かってきました。
日本モダニズム建築の生みの親、建築家
前川國男は、晩年「近代的な素材には、石やレンガが持つディテリオレーション(古びゆくさま)の美が欠けているのを痛感する」と、嘆かれました。
30年以上前に、私は外装レンガ張りの住宅を設計しました。 できた当座は量産化された均質な赤レンガの壁を少々疎ましく思っていたのですが、年月を経た現在、レンガには全然傷んだ箇所はなく、それなりに好ましい古びがでてきたのに驚かされました。 古くから使われてきた素材は、すべて耐久性に富み、かつ時間の経過のなかで美しく古びるという特性を持っていたのです。 我々は古い建物を描きながら、その建物が持っている持続する時間をも描いているのです。
文・画:船木幹也(「古き建物を描く会」発起人・建築家)
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