(きーすとーん66号より抜粋)
赤煉瓦ネットワーク大会 関門海峡レトロ建築ツアー
旧松本家住宅
門司赤煉瓦プレイス
 
 通信『きー すとーん』No.65で 開催についてお知らせしました「赤煉瓦ネットワーク関門大会」(11月16〜17日)へ、当会の杉浦代表、中村スタッフとともに参加してきました。  赤煉瓦ネットワークは、煉瓦建築の保存・活用を中心に“まちづくり”を行う全国の28団体で構成。 持ち回りで年一回開催される全国大会は、今回で23回を重ねているそうです。

 初日は飛行機を乗り継ぎ、北九州空港からJR門司港駅へ。 修復中で 全体が覆われているのは残念でしたが、大正3年築のこの駅舎自体が国の重要文化財になっており、昔の連絡船乗り場が残されていたり、駅を出ても古い建物が次々気になってしまい、到着早々、足はあっちこっちへ向かってしまいました。
 門司港周辺をゆっくり散策できたのは 結果的にその日だけでしたが、“門司港レトロ”と名づけて整備された街並みの雰囲気を味わえたことは、はるばる九州までやってきた目的のひとつがまずは果たせたというところです。
 ここには旧大阪商船、旧門司税関、門司郵船ビルをはじめ歴史ある建物が建ち並んでいます。 その多くはギャラリーやレストランなど誰でも内部を見学できるように活用され 幸いでした。

 二日目、まずはJRで戸畑駅へ。 「北九州へ行くならここ!」と 注目していた 旧松本家住宅の訪問です。 石炭王の松本健次郎氏が自邸などとして建てたもので、洋館と日本館ほか付属棟を備えた明治期のお屋敷の典型を成しています。 戦後は西日本工業倶楽部の所有となったため内部見学は不可ということでしたが、なんとか庭園へ入るお許しを得、外観を眺めるだけでも重要文化財の格式を堪能しました。
 さらに若戸大橋を仰ぎ見つつ、料金100円の渡船で若松地区へ。 全く予備知識はありませんでしたが、ここもまた“大正ロマンあふれる散策エリア”(ガイドマップより)でした。
 石炭の積出港として栄えたこの地区で ひときわ目立つのは、三階建て円形の塔屋を持つ旧古河鉱業若松ビルです。 煉瓦と石造りが調和した重厚な建物は、歴史資料室や会議室などとして一般開放されています。
旧大阪商船 旧古河鉱業若松ビル
 そしていよいよ、午後から始まる大会会場へ。 「門司赤煉瓦プレイス」という旧 ビール工場などの建造物を保存活用した場所です。 講演に続く開催地紹介、各地の事例発表、交流会と、全国から集まった熱心な参加者に圧倒されながら、『日本赤煉瓦建築番付』改訂などの話に聞き入りました。

 三日目は関門海峡を渡り、大会恒例の見学会として“下関赤煉瓦ツアー”へ。保存修理中の旧下関英国領事館では、足場をつたって軒下の煉瓦に触ったり、左官工事の現場を見たりと、一般の観光にはない面白さを体験しました。

旧 門司三井倶楽部
 解散後は再度 関門連絡船で門司に戻り、最後のお楽しみで旧 門司三井倶楽部を見学。 平成に入って移築されたものながら、ハーフティンバーの気品ある建物で、門司港のシンボル的存在かと思います。
 三日間で見学した建物をリストにしてみたところ、なんと20箇所。親切に案内をしてくれた地元の方々や大会関係者に心から感謝いたします。               長屋純子(スタッフ)


 王子サーモン館が 「日本赤煉瓦建築番付」 の前頭に…

今年の赤煉瓦ネットワーク関門大会では、『日本赤煉瓦建築番付』の13年ぶりの編成(改訂)が議題に上がりました。 2000年の番付では東の横綱に東京駅、西の横綱に大阪市中央公会堂を筆頭に、北海道からは大関にトラピスト修道院、関脇に日本製鋼所室蘭工場などが入っています。 今年の番付編成は議論が白熱して 大会中に決着せず、後日 発表されることになりました。
 この番付は全国の赤煉瓦ネットワーク会員などの意見も参考にされるので、私も「王子サーモン館」を推挙しました。 その結果、晴れて「前頭」に入幕する見込みとなりました。 ただし、解体されていますので、「休場」の扱いです。

在りし日の王子サーモン館 (2009年撮影)

「休場」には意味があります。それは、この建物に用いられた煉瓦を「土俵」に「復帰」させることです。 つまり、跡地の北1条西1丁目で進められる再開発事業において煉瓦を活用する、という願いを込めたものです。
 当会では、建物解体時に煉瓦を百数十個譲り受け、保管してきました。 当会の提案に基づき、現在、活用に向けて再開発準備組合と打ち合わせています。準備組合事務局からは、高層建築物の内部に作られる「仲通」の一隅に煉瓦を用いた平面的なモニュメントを設ける案が提示されました。 赤煉瓦番付への入幕を力に、今後も引き続き、事務局と詰めていきたいと思います。 
                            杉浦正人(札幌建築鑑賞会代表)


 

 TOP  札幌・小樽版画紀行 札幌建築鑑賞会通信 北海道の古き建物 建物観て歩る記
inserted by FC2 system